【J1展望】2021年は骨格を築く年…新指揮官の下、自分たちが主導権を握る戦い方にトライ|浦和

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 1月24日から2月7日まで、浦和レッズはおよそ2週間の沖縄キャンプを敢行した。そこでは新たなチームの輪郭も、希望も、課題も、多くのものが見えてきた。今シーズンは「3年計画」の2年目。1年目の昨シーズンは、大槻毅前監督がぐちゃぐちゃになっていったレッズのサッカーを平らにならした。今シーズンはリカルド・ロドリゲス新監督により、いよいよ骨格を築いていく年となる。チームコンセプトはそのままに、ピッチに現れる現象には変化が起き始めている。



 まず大きく変わったのが、ビルドアップだ。昨シーズンも後方からのボール運びにトライしながらままならず縦に速い攻撃に偏重していたが、今シーズンはより自陣深い位置からの組み立てにトライ。GKとDFでボール回しを安定させ、相手が奪いにくるようなら引きつけて裏返し、取りに来ないのならばじっくりと押し込むという、より柔軟なスタイルに進化しつつある。



 基本システムは4-2-3-1だが、相手のプレス枚数に合わせてDFラインやボランチが立ち位置を変化させ、時には3バックの形も取るなど「プラス1」を作ってボールを前進させる。後方やサイドの選手に合わせて前線も複数のタスクが要求され、サイドバックはウイングのように、ウイングはシャドウのような振る舞いも求められる。



 敵陣に相手を押し込んだ状況では5トップのような形にもなるため、かつての「ミシャ式」と比較されがちだが、現象としては類似のことが起こりつつもその本質は異なる。可変システムにより「自分たちのやり方を押しつける」ことに主眼が置かれていたペトロビッチ時代とは異なり、「一番は、相手を見てサッカーをするということ」(田中達也)と言うように、まず相手を見て、スペースと味方とボールの位置を見て、より自分たちが主導権を握る戦い方にトライしている。



 しかしながらキャンプ最終日の練習試合、北海道コンサドーレ札幌戦で1-4と大敗したように、完成度としてはまだ時間がかかりそうにも見える。引いてくる相手に対しては既にコンビネーションを生かした崩しを見せているが、激しく奪いに来られる状況ではまだうまく相手を剥がせずに、プレスの餌食となってしまうシーンが多く見られた。



 開幕してしばらくは、J1チームのプレッシャーに慣れるまで我慢が必要かもしれない。ただし、それを差し引いても観ている側にとって我慢のし甲斐がある、その先の完成形に希望を持てるサッカーを披露してくれることは間違いないだろう。



【KEY PLAYER】4 岩波拓也



 今シーズンの浦和は、ボールと主導権を握って相手を押し込むサッカーを志向する。そのスタイルにおいて最も重要なポジションというと、もちろんどのポジションも大事になってくるわけだが、やはりセンターバックということになるだろう。何より重要なのは、もちろん守れることと強さと高さになるが、今シーズンのスタイルでは攻撃の起点として課せられる役割も大きい。ビルドアップ戦術の進化に応じてプレッシング戦術も進化し続けるなか、センターバックがボールを運び、縦へのくさびを打ち込むことができなければにっちもさっちもいかなくなってしまう。



 昨シーズンまでの岩波拓也は、鋭いフィードや縦パスを放ちながら「運ぶ」ことについてはなかなかうまくいっていなかった。それが今シーズンは、リカルド監督の薫陶を受け進化しつつある。まだぎこちなさはあるものの、前方にスペースがあれば自ら持ち上がり、前線の味方を助け、チャンスへつながるパスを打ち込むシーンが増えてきた。中心選手としての責任感も一層増しており、新加入選手らとリフティングゲームに興じ、藤原優大ら若手と組んだ際は積極的に声を掛けて味方を動かし鼓舞する。岩波が真のディフェンスリーダーへと進化できるかが、今シーズンの浦和にとってひとつのカギとなってきそうだ。



文=沖永雄一郎



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2021.02.24 00:00:00


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