ポルトガルの快進撃を支えた玄人好みの職人MF

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小柄な選手でも、高い技術と運動量で一流であることを証明したモウチーニョ
Photo:(C)Kazuhito Yamada/Kaz Photography

写真で伝える欧州最前線

前日、スペインの連覇で幕を閉じたユーロ2012だが、予想以上の力を発揮して準決勝に進んだチームが2つあった。グループリーグでスペインと互角に戦ったイタリアと、“死のグループ”と呼ばれたグループBを2位でくぐり抜け、準々決勝ではグループA首位のチェコを下して準決勝に進んだポルトガルだ。

準決勝で優勝候補のドイツを下して決勝に進んだイタリアは、かつての権威を取り戻したと言っていいだろう。その立役者は、「スーパー・マリオ」ことマリオ・バロテッリとアンドレア・ピルロ。そして、準決勝でスペインをあと一歩のところまで追い詰めたポルトガルも、クリスティアーノ・ロナウドを中心にバランスが取れた好チームだった。

そのポルトガルの中で、筆者が皆さんにもう一度ビデオでも見ながらプレーをチェックしてほしい選手がいる。守備の意識が高く、それでいて攻撃の起点にもなっており、黒子のようにゲームを作り、守備では前から果敢にプレッシャーをかけるというチームの方針に忠実に従う。スペイン自慢のパス回しを封じて前進を阻み、パス回しをしながら後退させるという作戦の中心にいたのは、ジョアン・モウチーニョだった。

身長わずか170センチ。日本人と比較しても小柄な彼が代表デビューしたのは、2005年の夏で18歳のときだった。2006年のドイツ・ワールドカップでは最終選考に残れなかったが、ユーロ2008では10番を付けてデコの後ろでゲームを司った。このあたりから注目を浴び出したモウチーニョは、2010年の南アフリカ・ワールドカップで中盤の主軸に成長。そして、クラブもスポルティング・リスボンからポルトに移籍し、2010-11シーズンにはヨーロッパリーグ優勝に輝いた。ラダメル・ファルカオの大活躍に隠れる形となったが、玄人好みの選手である。

高い基本技術に裏打ちされた守備と攻撃で精力的に動き回り、労を惜しまない。テクニックがありながら、チームのために動き回れる選手はなかなかいない。

この夏の移籍期間には、ビッグクラブに移籍するかも知れない。どのクラブが彼に価値を見出すのか楽しみだ。


【プロフィール】
山田一仁(やまだ・かずひと)
1957年岐阜生まれ。千葉大学工学部画像工学科を卒業後、1981年から(株)文藝春秋写真部にスタッフカメラマンとして在籍。1989年春に退社し、イギリスに語学留学する。1990年からフリーカメラマンとして活動。2007年に(有)Kaz Photographyを立ち上げる。日本人フリーランスカメラマンとして唯一イングランド・プレミアリーグの撮影ライセンスを所持しており、現在は、年間の半分近くをロンドンを拠点として、主にイングランド・プレミアリーグ、欧州チャンピオンズリーグ、外国リーグで活躍する日本人選手を取材している。

2012.07.19 00:00:00


ジョアン・モウチーニョ プロフィール

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